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【留学冬休み旅行記】クリスマスのニューオーリンズ──墓地、ジャズ、レヴェイヨンの夜

クリスマス当日のアメリカ観光は、事前の下調べが欠かせない

クリスマス当日は、観光地とて例外なく多くの施設が休業する。
博物館、美術館といった文化施設はまずほとんどが閉まっているし、交通機関も通常ダイヤでは動かない。
ニューオーリンズでも、ミシシッピ川を行き来する観光蒸気船のスティームボート・ナッチェズ(Steamboat Natchez)もこの日は運休だった。

ディズニーやユニバーサル・スタジオのような大型テーマパークは年中無休が基本だが、それ以外の観光施設やツアーについては、渡航前にひとつひとつ営業確認しておくことを強くすすめる。

ツアー会社の中には、クリスマス当日も催行を続けているものがあった。
今回私たちが参加したのは、バスで市内の名所を車窓観光しながら墓地を見学できるシティ・セメタリー・バスツアー(City & Cemetery Bus Tour)だ。

集合場所が蒸気船の乗り場付近であることが多いこの手のツアーの中で、ホテルまで迎えに来てくれる送迎付きのものを選んだ。
集合場所まで歩かずに済むのはありがたい。

ニューオーリンズの墓地について

ニューオーリンズの墓地が観光スポットとして成立しているのには、明確な理由がある。

この街はミシシッピ川デルタの低湿地に位置し、地下水位が非常に高い。
そのため土中に埋葬すると、雨季や洪水の際に棺が浮き上がってしまうという問題があった。
その解決策として発達したのが、地上に墓室(廟)を積み上げる「地上埋葬」の文化だ。
フランス・スペイン統治時代の18世紀にその様式が確立し、現在まで続いている。

整然と並ぶ白いレンガの墓廟群は壮観で、ガイドの解説を聞きながら歩くと、この街の複雑な歴史が見えてくる。

案内されたセント・ルイス墓地第3号について

今回のツアーで下車して見学したのは、セント・ルイス墓地第3号(Saint Louis Cemetery No. 3)だ。
エスプラネード通りに面したこの墓地は、ニューオーリンズ・カトリック系の墓地群の中でも最も大きく、著名な市民や南北戦争の兵士たちが眠っている。
ギリシャ正教コミュニティが設けた共同廟など、多様な宗教・民族の文化が混在しているのも特徴だ。

見学にあたってのルールとして、写真撮影は問題ないが動画撮影は控えるよう案内があった。お墓や構造物には触れない、寄りかからないといった基本的なマナーは当然のこととして守りたい。

セント・ルイス墓地第3号はツアーでなくても個人で入れる墓地のようだ。

ガイドが一通りニューオーリンズのお墓文化を解説した後、自由見学の時間が設けられた。英語のガイドを完全に聞き取れなくても、景観そのものに十分な存在感がある。

バスに戻った後は、フレンチ・クォーターや各所の名所を車窓から眺めながら市内を一周した。

街をぶらぶら——フレンチ・クォーターの空気感

ツアーを終えた後は、バーボン・ストリート(Bourbon Street)からフレンチ・クォーター周辺の街を歩いた。

フレンチ・クォーターには可愛らしい建物が並ぶ。

石畳の路地、鉄製のバルコニー、ガス灯を模した街灯——この景観が、かつて東京ディズニーランドのスプラッシュ・マウンテン周辺エリアのデザインに影響を与えたとも言われる。
実際に歩いていると、あのアトラクションのどこかを思い出す感覚があった。

そういえばニューオーリンズに到着した夜に夕食をとった店の名前も「ブルーバイユー・レストラン(Blue Bayou Restaurant)」だった。
東京ディズニーランドにも同名のレストランがある。

夕食前の楽しみ——プリザベーションホールのジャズライブ

この日のディナーの前に、もうひとつ外せない予定があった。

プリザベーションホール(Preservation Hall)でのジャズライブだ。

726 セント・ピーター・ストリートに位置するこの場所は、1961年に「ニューオーリンズのトラディショナル・ジャズを守る」という使命のもとに設立されたライブハウスだ。
年間360日以上のペースでライブが開催されており、クリスマス当日も変わらず営業していた。

ここへの訪問は娘のリクエストだった。
私自身は存在さえ知らなかったが、世界的に知られた場所らしく、我々のように、本国でチケットをあらかじめ購入して、訪れる外国人も少なくないようだ。

実際、ニューオーリンズにはジャズバーが多数あるが、アメリカの飲酒可能年齢(21歳以上)に満たない同行者がいると入場できない店も多い。
娘はまだ20歳だったので、年齢制限のないプリザベーションホールを選んだという事情もある。

チケットの種類と購入方法

公式サイト(preservationhall.com)でチケットを事前購入するのが基本で、現在は窓口での当日現金払いには対応していない。席のタイプによって価格が異なる。

椅子席(Best Seat / Preserved Seat) スタンディング(General Admission)

今回私たちはスタンディングを選んだ。
ライブは1回あたり45分前後で完結し、会場はこぢんまりとした空間。
椅子席の後方にスタンディングエリアがあり、そこから演奏を聴く形式だ。

建物の外には、チケットを持った人々が列をなしていた。
古びたたたずまいの入口は、知らなければ見落としてしまいそうなほど小さい。

プリザベーションホールの入り口に並ぶ。

バンドのメンバーには日本人名を持つ女性ピアニストがいた。国籍はわからないが。

帰り際のグッズ売り場はかなりの混雑。ステッカーやオリジナルTシャツなどを購入した。

レヴェイヨンとは——ニューオーリンズのクリスマスの食文化

ライブが終わると、ちょうどディナーの予約時間が近づいていた。
この夜の夕食のテーマは「レヴェイヨン(Réveillon)」だ。

フランス語で「目覚め」を意味するレヴェイヨンは、もともとクリスマスイブの深夜ミサの後に家族で食卓を囲む習慣から来ている。
ニューオーリンズでは、この伝統を受け継いだクリスマスシーズン限定の特別コース料理として、参加レストランがそれぞれ独自のメニューを提供する、この街ならではのダイニング文化として現在も続いている。

予約したのはフレンチ・クォーターのロイヤル・ストリートにあるキュリオ(Curio)だ。

キュリオでのレヴェイヨンディナー

キュリオは301 Royal Streetに位置するクリオール・アメリカン料理のレストランだ。
2階バルコニーからロイヤル・ストリートを見渡せるつくりで、フレンチ・クォーターの雰囲気が存分に楽しめる。

時間通りに到着し名前を告げると、2階のテーブルに案内された。眺めはいい。

テーブルには最初、通常のメニューが渡された。レヴェイヨンメニューを希望すると伝えると、専用の別冊メニューを持ってきてくれた。
メニューは4コース構成で、各コースの中から2~3品のいずれかを選ぶスタイル。
前菜、スープ、メイン、デザートとニューオーリンズらしい食材を使った料理が並ぶ。
一皿一皿が特別に豪華というより、クリスマスシーズンを「ニューオーリンズらしい食」でゆっくり味わうためのコースという趣だった。

娘は迷わず前菜にガンボスープを選んでいた。
ニューオーリンズ滞在中、すでに何度目かのガンボだ。

料理の出来はまずまず。バルコニーからの眺めと雰囲気を合わせると、クリスマスの夜の食事として十分に満足できるものだった。

ニューオーリンズのガンボについて補足しておくと、ガンボはアメリカ南部全体で食べられるが、それが最も日常的に、かつ多様なバリエーションで楽しめるのはやはりニューオーリンズだ。
ジョージア州の大学町アセンズでも食べられる店はあるが、ここほどの選択肢はない。
娘がこの街を気に入った理由の一端は、間違いなくガンボにある。

キュリオ(Curio)でレヴェイヨン。最後のデザートのボリュームがすごい。

墓地ツアー、フレンチ・クォーターの散策、プリザベーションホールのジャズライブ、そしてレヴェイヨンのディナー——ニューオーリンズのクリスマスを、予想以上に密度濃く体験しできた一日となった。

バーボン・ストリートは夜になっても賑わいが続いており、多くのバーが営業中だった。
クリスマスといっても完全に静まり返ることはなく、それがニューオーリンズらしいところかもしれない。